簡易水洗
トイレの見た目は水洗トイレで、トイレ排水は市町村などの下水道網に管で直結されないタイプのことです
簡易水洗(かんいすいせん)とは、便器や貯水タンクは水洗トイレそのものですが、汲み取り式となっているもののことです。言い換えれば、トイレ排水は、市町村などの下水道網に管や浄化槽経由で直結されないために、いったん敷地内などにあるタンクなどに貯められるタイプのものです。
簡易水洗で使用されるタンクには、簡易水洗用便槽や、無臭便槽、その他特殊便槽などがあります。通常は、集合住宅や地域で下水道網に接続手前で水をある程度きれいにしてから流すための浄化槽とは別のものということです。
ただし、今後の下水道整備を考え、浄化槽と連続して設置したり、もとより浄化槽と簡易水洗用便槽を一部兼ねたような製品も存在します。
国内各地では、新興住宅地や山里など、その地域の下水道最終処理場から遠いエリアや、下水道網設備敷設の計画などが十分に固まっていない地域に多く見かけられます。
全国比では、比較的下水道普及率が低い徳島県では、地域の下水道網自体の整備が近年というところも少なくありません。汲み取り式から水洗式への変更工事は推奨されていても、古くからその地に暮らすご家庭も多く、敷地内の大きなリフォームは未経験、工事中近隣に迷惑をかけるのが心苦しい、といったご家庭も少なくないため、簡易水洗タイプのお宅も数多く見ることができます。
トイレ排水のタンクや、室内のトイレ側設備には、簡易水洗ならではのさまざまな工夫があります。とくに室内のトイレ側設備は、一般の水洗式便所と同じもののように見えても、簡易水洗用に特化した機能や形状がそなわっていることが一般的です。
し尿排水は、少量の水で流し簡易水洗用のトイレタンクに一時貯められます。このタンク内での微生物の働きで、分解など一部の処理を行うタイプが一般的です。
トイレ側は水洗トイレと似たような仕組みで、タンク側との間の管部分を水封してしまうため、タンク内でガスなどが大量に発生しても、匂いが便器内には流れてきにくい構造になっています。ただし、タンクは一般家庭用ではあまり大きくないこともあり、一度の水洗フラッシュ(フラッシュ=水を流すこと)あたりの使用水量がとても少なくなっています。
また、水の量を更に減らして泡や特殊薬剤などを利用するタイプの簡易水洗便器システムも存在します。
簡易水洗のトイレタンクは、汲み取り式とは違い、便器直下の直結型ではありません。管などでいったん接続されたり、直下型でも間で便器側に蓋などが組み込まれたものがほとんどです。
中にはすこし変わった物件で、簡易水洗用のタンクではなく、一般の汲み取り槽の上に、簡易水栓式便器などが取り付けられたものも存在します。
戸建ての簡易水洗設備やトイレタンクでは、自分で管理を行うため、定期的に微生物や薬剤を補充しなければならないものも存在します。
いずれにしろ通常、簡易水洗の場合には、室内側はほぼ水洗トイレ、トイレからのし尿排水だけは汲み取り式というハイブリッドタイプの為、定期的に各建物ごとに汲み取りを依頼します。
戸建てタイプは、ある程度の目安量や溜まって来たごとに、汲み取り業者に依頼をしますが、集合住宅の場合、建物ごとや敷地単位で、不動産管理会社が定期的に汲み取り依頼を行っています。 また、屋外の簡易水洗タイプ汲み取り槽から浄化槽として使用できるタイプの製品を使い、地域の下水道網に接続する工事もできることから、都市部の大型マンション等物件を中心に、こういった工事を行っている建物も増えています。
集合住宅、あるいは敷地内共用の簡易水洗タンクや汲み取り槽関連設備利用としている物件の場合、月々の共用部使用量や管理手数料などを含め「下水道使用料等」「衛生費」やこれらの積立金として徴収されることが多いようです。
各戸の排水がメーター式の場合は、その使用量割や、上水道使用量に応じた世帯全数按分で請求される課金体系のところもあります。
宅内外の臭いについては、旧来の汲み取り槽タイプではないものについては、ほぼにおいが外に漏れないものが一般的になりつつあります。旧来の汲み取り槽タイプでも、タンク内に専用の微生物を投入、配管の工夫やこまめな汲み取り依頼、排気設備廻りの清掃、汲み取り作業後のパイプ侵入部分の土の掘り返しやばっ気蒸散を行うことで、かなりの臭いは軽減されます。
逆にこれらの対策を行っても室内や屋外ににおいが漏れてくるという場合には、配管などのズレや故障が疑われます。
気になる点は、不動産会社にしっかり確認しておくのが良いでしょう。